事実婚【ディファクト】〈De facto〉日本と豪州の比較
オーストラリアで生活をしていると一度は耳にしたことがある「ディファクト」という言葉。
実際結婚はしていないものの、事実上夫婦と同様の生活をしている事実婚関係にあるカップルをディファクトと呼びます。
移民局のウェブサイトで De facto の定義を確認すると以下のとおり↓
De facto
Not legally married, but in a spouse-like or spouse-equivalent relationship. Sometimes known as ‘common law’ spouse.
オーストラリアは事実婚が多い国としても知られており、カップルによっては婚姻関係ではなく事実婚(デファクト)を選択する方も多い印象です。
恋愛にオープンで離婚も多いフランスでは、結婚も入籍もしないまま夫婦生活を送り、子どもを産み育てる「事実婚」がかなり多め。
1999年に事実婚カップルに法的権利などを与える制度(PACS=連帯市民協約)という制度ができてからは、いっそうその傾向が強まっているようです。
ディファクト(De facto)マリッジの手続きを行い、別姓のまま家族になるカップルもかなりの数。
事実婚のことをディファクト(De facto)と呼びます
オーストラリアの市民権・永住ビザを持つ方と一緒に暮らして12ヶ月以上経つ場合は、事実婚(デファクト)ビザの申請が可能だよ
ディファクトはいわゆる「事実婚」のことで、法律婚(結婚、婚姻)とは異なります。
日本の事実婚とは制度上も違いがあります。
旦那P君の母と義父(ステップファーザー)も事実婚で20年を共にして、私とP君が結婚するほんの2年前にやっと入籍しました。
結婚式って形だけのものだからね、法的には事実婚でも問題ないし…。
結婚の際の写真を見せてもらったことがありましたが、その際もカジュアルな普段着で結婚登録所における結婚式でした。
そして今も超ラブラブです!
お互いが子持ちで一緒になり、彼らの子供はいませんがお互いの子供たち(それぞれ二人ずつ)とも仲良くしています。
結婚式のスタイルについては別記事でもお伝えしています↓
https://www.fujikotravel.com/weddingstyle/
私が事実婚の実情を知ったキッカケは旦那P君の学生の頃からのお友達のA君。
学生時代からの彼女Mさんと籍は入れずに事実婚のまま。
私がパース在住時(2003年~2004年)には旦那の親友ということで、このカップルと何度も会いましたが、男性側がまだ結婚するつもりはないという意思で、別居スタイルの事実婚。
その後二人が授かった4人の子供はお互いの家を行ったり来たり…
そしてお友達のA君は2021年に初めて別の女性と結婚し、新婚旅行がてら日本に遊びに来てくれました。
久々に京都で2人に会い、観光をしながら近況報告中に事実婚についての話題になりました。
A君がなぜ結婚せず4人の父になったか…
どうしても入籍するほどまでの気持ちに至らなかったと。
じゃあなぜそのままの状態で子供だけ4人まで増えるのか?
日本人の私にすれば文化の違いがありすぎて、この点について疑問がわくけれど、自分の気持ちに正直な国民性。
Aさんをとても好きなMさんの方の気持ちも知ってるだけに微妙でした…。
とはいえ個人的には悪いシステムでもないと思うのです。
法的に同じなら、私もこの選択肢を選んだかもしれない…
その時知らなかっただけで…
オーストラリアも日本と同じく少子化、フランスに至っては少子化対策として事実婚でも子供が3人いれば税金面でもかなり優遇される政府のシステムが功を奏し、一気に少子化問題が緩和されました。
豪州版ディファクトの条件
ビザ申請の際に自身のビザにパートナーを含む場合は、ディファクト関係の証明が必要となります。
証明するには12カ月以上同居していることが条件となっており、同居期間を証明する書類を提出し、いかにディファクト関係を証明できるかがポイントになってくるので、一緒に暮らした部屋のレシートなどは必ず保管しておくようにしましょう!
ディファクトの条件はこちら↓
- 18歳以上
- 結婚していない
- 排他的関係である
- 同居生活をしていて、長期間別居をしていない
- 政府指定の用紙に記入
- 無犯罪証明(日本/オーストラリア)
- 健康診断
- 出生証明書
- 偽りのない恋愛関係が継続していることを示す証拠
詳細は申請時にご確認くださいね。
そして最後に挙げた、偽りのない恋愛関係が継続していることを示す証拠については以下の方法が一般的です↓
- 出会いから今までに至る2人の経過と関係を書く
- 旅行した時の飛行機チケット、ホテルの支払の記録
- 共同口座の記録
- 家賃、水道代、電気代、食費などの支払の記録
- 過去の2人のやりとりの記録(手紙、カード、スカイプ、Eメールなど)
- 過去に撮った写真(2人の家族も一緒に写ってあるものが望ましい)
- 2人をよく知るオーストラリア永住権保持者にリファレンスレターを書いてもらう等
Spouse Visa: Onshore Temporary and Permanent (Subclasses 820 and 801)
英語では恋人同士も同棲カップルも夫婦も「couple」。
ディファクトなら「de facto couple」、結婚していれば「married couple」。
いずれの場合も日常的には「couple」の一言で間に合うので、誰が恋人関係で誰が夫婦かなど詮索することはないように感じます。
国により様々な呼び方がありますが、カナダではCOMMON-LAW、オーストラリアやニュージーランドではPartnerと呼びます。
ちなみに、オーストラリアに戸籍制度や住民票はありません。
そのため「戸籍筆頭者」や「世帯主」のような代表者を決める必要もありません。
戸籍制度がある国は世界に数カ国しかないんだよ…豪州も戸籍はないよ!
戸籍についてはこちらの関連記事もどうぞ↓
https://www.fujikotravel.com/international-marriage/
ちなみに上記にあるサブクラス820 (Subclasses 820)はオーストラリアの市民権・永住ビザを持つパートナーとの婚姻やデ・ファクトです。
オーストラリアに滞在するための2年間の一時滞在ビザで、2年後に サブクラス801 を申請することにより永住が可能になります。
このビザは 暫定の配偶者ビザ なので入籍は不要だよ
2年後も良好な関係が続いていることがちゃんと証明できれば、永住ビザが取得できるシステム。
オーストラリア滞在中にパートナーができて、一緒に生活しているカップルが申請するケースが多い印象です。
ただ申請にはパートナーも適格要件を満たしている必要があります。
旦那のP君がまさにそのパターン…
例えば、パートナーが過去において既に2人のスポンサーになっていたり、過去5年以内にスポンサーになっている場合(旦那はこのパターン)においてはサポートすることができませんので注意が必要です!
私が婚約後オーストラリア在住中は観光ビザ…だったので仕事もできず、3か月ごとに海外に出てビザをつないだり、追加料金で6か月ビザに変更したり…
ちょうど前妻のスポンサーになっていて、そして離婚してからまだ5年経ってなくて…サポートできなかったんだよ…
偽装結婚などを防ぐために年々ビザの審査は厳しくなってきています。
詳細は、法律の専門家に相談されるのが良いです。
また費用や条件なども頻繁に更新されますので最新情報をご確認ください。
それはまた別記事で詳細をまとめるとして…
結婚した夫婦もディファクトカップルも、2人の関係は社会制度的に対等に扱われるオーストラリア。
では違いはなんなのか?
事実婚と結婚の違いは?
オーストラリアでは基本的に婚姻とディファクトの間に法的な権利の違いはありません。
相続も財産分与も、家を借りる際にも、手術や入院時の同意や立ち会いも婚姻をしている夫婦と変わらず同じ。
公的手続きでも2人の関係を示す時には夫婦と同じく「ディファクト」を選択可能。
とにかくベーシックに多様性が浸透している国であり、日本と比較しても他人のプライベートにそこまで興味がない国民性というのもあるかもしれません。
子供の学校の手続きでも扱いは全く同じだよ!
オーストラリアのディファクト制度は日本の事実婚とは似て非なるものです。
日本の法的な『事実婚』って
では日本の法的な『事実婚(内縁関係)』の定義とは…
- 法律上の夫婦として認められていない関係
- 3年以上の家計を同一にしている同居の実態がある
- 当事者2人の婚姻の意思が認められる場合
- 内縁の妻とは、特定の男性と社会的には夫婦としての実態を持ちながらも婚姻届を出していないこと
単なる同棲や同居でなく、内縁の妻であるという事を証明するには親族や友人、また同僚のなどの証言が有効になるそうです。
日本で『事実婚・内縁関係』を証明するもの
では日本ではどう証明するのか?
- マンションの賃貸契約書や住民票に『内縁の妻』と記載する
- 2人分の収支が同一の通帳に記載されているもの
- 2人分の家具購入明細
- 事実上の夫婦となる意思があるとみなされる妊娠の医療記録
日本とオーストラリアを比較するとオーストラリアのディファクト制度も日本の『事実婚・内縁関係』も法律的にはあまり違いはないですが、日本では3年で、オーストラリアの場合は2年で、という期間の差に違いがあります。
法律上の婚姻関係にない以上、離婚だとか財産分与だとかについてはとっても曖昧になる部分が…。
どうしても日本側には男尊女卑の風習が残っているのを感じます。
基本的には双方の話し合いだったり、慰謝料の問題だったりとそれなりに拘束力はあるものの、それでもオーストラリアははっきりとその点は記載があって分かりやすいです。
ディファクトが長かった義理の親を見ていると、彼らの関係は国に認証されるまでもなく、ただ愛の延長線上に永遠の絆が生まれている、と感じます。
僕が5歳の時からの事実婚だけど、お互いをサポートする思いやりにあふれているんだよ、とても理想的なカップル♥
ちなみにオーストラリアでは、男女ともに18歳以上がが婚姻可能年齢で、日本(日本は2022年4月から)と同じです。
ただ、オーストラリアでは条件付きで16歳・17歳で結婚することも認められています。
この場合は、両親の書面での同意と裁判所の承認が必要になります。
なぜディファクトを選ぶのか?
国によっては〈州で違う場合も〉日本のように婚姻届を提出して手続きが完了するシンプルなものではなく、事前に許可提出が必要だったり、宗教的にも結婚式を必ず執行する事!等の決まりがあり、法的手続きが多いのです。
結婚式の執り行いや、離婚の際の手続きが大変だから、宗教によっては離婚自体が許されないこともある、という理由から事実婚を選ぶという方も少なくはないのです。
さらに国際恋愛となると国により異なる結婚や離婚した際の手続きが複雑化するので、事実婚という選択肢が多くなります。
移民の多いオーストラリアやカナダではお互いの背景や個人を尊重する文化が色濃く、より事実婚の解釈が進んでいます。
パートナーと離れたくないけどビザが切れてしまう…
結婚の書類手続きが大変…等の国際恋愛あるあるのお悩みも、事実婚という選択肢で解決できることも多々あります。
離婚率が高くなっていることや長寿になっていることも影響していると言われています。
45歳以上の場合だとその多くは離婚の経験があり、お互いの生活の事情や前妻との子供のこと、生活習慣の違いなどを考えて、いまさら同居に向けた努力をするよりは現実的にリスクを回避する方法を選択していることも。
実際に旦那の親類縁者で最初の結婚生活が続いている人は、私の知るところ実は私だけ…⁉
旦那も、旦那の親も、旦那の妹も、旦那のハーフシスターも皆、2回目、3回目と再婚、もしくは事実婚の状態…
皆さんなかなかの離婚率、そして連れ子での再婚率も然り。
子供がいるから離婚をとどまる、ということはまず選択肢にない自由な国民性。
それはやはりディファクトも婚姻関係とほぼ同等の権利があるからゆえのこと。
共同名義の銀行口座を持っている事や、事実婚を継続させている何らかの証拠があれば、もしサヨナラすることがあっても別れる際には離婚と同じ財産分与が認められる場合もあり、事実婚に関する法的なサポートが充実しています。
まとめ
欧米では社会的に事実婚が受け入れられているという点がかなり大きいです。
特に事実婚が多いフランスやドイツでは、夫婦別姓が多く、女性も男性と変わらず働いているため、家賃や食費などの生活費はカップルで折半などが普通という環境なので、「事実婚でも結婚でも実生活には大差がない」との認識の人がほとんど。
結婚の理想年齢がなく、法律上の結婚にも捉われない風潮。
近頃では日本でも事実婚が取り上げられることが多くなったので日本での結婚に対する価値観も、今後は変わっていくでしょう。
皆さんの中でも海外のパートナーと人生を遂げたいと考えている方もいると思います。
その場合はまず同性婚、事実婚をする該当国、州の法律を事前によく調べてから大切な決断を下すことが大切!と覚えておいてくださいね。
永住権、スポンサービザなどの詳細は、私自身の経験も踏まえながら、別記事でお伝えしています↓